✍️【論文から学ぼう!】歴史教育における主題学習の教材構成原理 : プロジェクト社会科『合衆国史コミュニティから社会へ』の分析を通して(山田 2003)

はじめに

こんにちは、外﨑です。

今年度は6年生を担任しています。

そのため、社会科で歴史学習を行います。

歴史学習を行うにあたり、教科書に記載されている内容を追っていく通史学習だけでは

子どもたちの学びたい!という意欲を刺激することができないと考えました。

そこで、主題学習という手法に目をつけました。

今回は先行研究を色々と探していく中で出会った

歴史教育における主題学習の教材構成原理 : プロジェクト社会科『合衆国史コミュニティから社会へ』の分析を通して(山田 2003)

を読んで学んだことを書いていきたいと思います。

論文を読んで得た学び

  1. 主題学習の意義は、現代社会の成立根拠を理解させると同時に、現代社会を自由にそして批判的に読み解くための知識を獲得させる点にある。
  2. 主題学習の教材構成の原則として、以下の3点が導かれる。
  • 主題に関係した現代社会の成り立ちを教えることを第一の目的とし、主題に関係した社会諸科学の知識を教えることを第二の目的とする。
  • 現代社会の構成要素の起源や来歴を、社会変動の過程の中で特定させるように教材構成する。
  • 社会変動の要因や影響の様々なパターンを科学的に探求させ、変動の背後にある理論や法則を形成・吟味させるように教材構成する。
  1. 主題学習の教材は、社会変動の1サイクルを基軸として内容を区分し、単元を配列する。また、仮説・検証の科学的方法に即して単元を展開し、社会変動の類型を複数提示する。
  2. 学習過程は、過去社会の合理的解釈を通して現代社会の起源・来歴を特定する過程と、事実分析に基づく一般原理の習得過程で構成される。
  3. 以上のように構成される主題学習は、現代社会の成立根拠の理解と、社会を自由に批判的に読み解く知識の獲得を可能にする。一方で、描かれる歴史像の価値関係性や、認識の科学性の保障などの課題も残されている。

ちょっと具体的にすると・・・?

  1. この教材の主題は「合衆国(周辺地域を含む)における多民族・多文化社会の形成」であり、その形成過程を学習することで、現代のアメリカ社会の成り立ちを理解し、多文化社会について批判的に考える知識を獲得することをめざしています。

  2. 教材構成の原則に即していえばインディアンのコミュニティ生活から、ヨーロッパ人の移住によって多民族・多文化社会が形成されるまでの過程を扱うことで、現代社会の成り立ちを教えています。

  3. 各地の民族文化が接触・融合し、文化構成が変動する過程を追跡することで、現代の文化的要素の起源や来歴を特定させています。

  4. スペイン人とアステカ族、フランス人とカナダ先住民の接触など、複数の事例を比較検討することで、文化接触が引き起こす社会変動の多様なパターンを探求させています。教材は、インディアンのコミュニティ生活から多民族・多文化社会の形成に至るまでの変動を6つの段階(単元)に区分し、各単元内では仮説検証的な学習を展開しています。

  5. 学習過程では、例えばフランス人移住者がニューフランスの形成過程で本国の文化を移植していった経緯を追跡することで、現代のフランス系カナダ人の生活文化の起源を理解させたり、「人々の移住には文化の移動が伴う」といった一般原理を習得させたりしています。

  6. このように構成された学習によって、子どもたちは多民族・多文化社会としての現代アメリカの成立根拠を理解し、文化の接触・融合のメカニズムについての知識を獲得することができます。ただし、白人中心の歴史観で叙述されている点など、一定の価値関係性を帯びていることにも留意が必要です。

参考資料

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この記事を書いた人

福岡の小学校教員 8年目 / 社会科の授業にICTを活用 / GEG Chikuhoリーダー /初心者向けICT研修講師/ 福岡社会科教育実践学会・日本教育工学会所属 / WordPressでICT活用術を発信 / 動画編集・デザイン・Web記事作成・論文執筆・楽曲制作も

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