はじめに
通常学級に在籍するLD(学習障害)の可能性がある児童は、4〜7%ほどいると言われています。しかし、適切な支援を受けている児童は半数程度に留まっているのが現状です。では、通常学級の先生方は、LD児童にどのような支援を行えばよいのでしょうか?
河野俊寛氏の論文「LDへの教育機関での取り組み」では、LD児童への効果的な支援方法が紹介されています。この論文から、授業改善のための5つのヒントを探ってみましょう。
1. 児童の行動観察と適切な検査の実施
LD児童は、学習面での困難さから、学習に消極的になることがあります。そのような児童の行動をよく観察し、読み書き困難が原因である可能性を考えることが大切です。具体的には、以下のような行動に注目しましょう。
- 書くことを嫌がる
- 読むことに時間がかかる
- 文章を読んでも内容を理解できない
- 計算が苦手で、つまずきが多い
これらの行動が見られた場合、担任教師は、特別支援コーディネーターや専門家と連携し、適切な検査を実施することが重要です。知能検査や読み書き検査の結果から、児童の強みと弱みを把握し、効果的な支援方法を検討しましょう。
ただ、いきなり検査にもっていくのは違うと思います。
まずは児童と保護者との信頼関係を築いてから、どのような困難さを感じているのかをお互いに理解した上で、支援の方向性を行うために検査の話をするといいかもしれません。
個人的には担任が困難さを見とったらその子に合わせた支援を行えるようにならなければならないと考えています。
診断名の有無は関係ありません。困っていたら支援する。という単純な話だと思いませんか。
2. 児童の特性に合わせた合理的配慮の提供
LD児童には、読み書きの困難さを補うための合理的配慮が必要です。例えば、以下のような配慮が考えられます。
- キーボードを使って文章を入力することを認める
- 漢字テストを読み問題に変更する
- 教科書の文章を音声で読み上げる
- 授業のポイントを視覚化して提示する
合理的配慮を提供する際は、児童の特性や困難さの程度を考慮し、一人一人に合わせたきめ細やかな対応を心がけましょう。また、配慮の内容については、児童本人や保護者とよく相談し、理解と同意を得ることが重要です。
3. 多様な学習ツールの活用と個別支援の充実
LD児童の学習を支援するには、多様な学習ツールを活用することが有効です。デジタル教材やアプリ、音声読み上げソフト、漢字変換機能付きのワープロソフト、電卓や計算ソフトなどを効果的に活用するためには、教員のICT活用指導力を高めることが不可欠です。
また、特別支援教育に関する知識を深め、児童一人一人の特性に合わせた個別支援を行うことが重要です。個別の指導計画を作成し、PDCAサイクルで支援の効果を検証しましょう。特別支援教育支援員やボランティアを活用し、放課後や長期休業中の個別指導の機会を設けることも効果的です。家庭と連携し、学習面での支援を継続することも大切です。
この多忙な中、実際は難しいんですけどね・・・
可能にするための業務改善や人員の増加が必要ですよね。
4. インクルーシブ教育の推進と多様性の尊重
LD児童が安心して学習できるためには、インクルーシブ教育の推進と多様性の尊重が欠かせません。インクルーシブ教育とは、障害の有無にかかわらず、すべての児童が同じ場で共に学ぶことを目指す教育のことです。
インクルーシブ教育を推進するためには、障害に対する理解を深め、偏見や差別をなくすことが大切です。一人一人の特性を認め合い、互いに支え合える学級づくりを行いましょう。ユニバーサルデザインの視点を取り入れ、すべての児童が学びやすい環境を整えることも重要です。交流及び共同学習の機会を設け、多様性を尊重する態度を育てましょう。
5. 教員の専門性向上とチームでの支援体制の構築
LD児童への効果的な支援を行うためには、教員一人一人の専門性向上が欠かせません。特別支援教育に関する研修会や勉強会に積極的に参加し、最新の知識やスキルを身につけましょう。また、日々の実践の中で、試行錯誤しながら指導方法を改善していくことが大切です。
さらに、教員間の連携を強化し、チームでの支援体制を構築することが重要です。担任教師だけでなく、特別支援教育コーディネーター、養護教諭、スクールカウンセラーなどと情報を共有し、多角的な視点から児童を支援しましょう。保護者や外部の専門機関とも連携を図り、切れ目のない支援を提供することが求められます。
まとめ
通常学級でLD児童を支援するには、児童の特性を理解し、適切な配慮を行うことが大切です。河野氏の論文は、具体的な支援方法や授業改善のヒントが満載です。ぜひ一読し、LD児童の可能性を引き出す指導を実践してみてください。
LD児童への支援は、特別支援教育の専門家だけの仕事ではありません。通常学級の先生方一人一人が、インクルーシブ教育の理念を理解し、日々の実践の中で工夫を重ねることが求められます。すべての児童が、自分らしく学び、生きる力を身につけられるよう、今日から一歩ずつ、支援の輪を広げていきましょう。
特に心に残った部分
合理的配慮(reasonable accommodation)とは,本質を変えることなくスタートラインを同じにすることを目的とした,「理にかなった変更・調整」 である。LDの支援を考える時,「学習の本質」 とは何かを考える必要がある。文字の読み書きは学習の 「本質」 ではない。学習の 「本質」 は,覚えること,考えること,表現することであろう。文字の読み書きは学習のための道具にすぎないことを,学校の教員は改めて確認してほしい。
一人だけ違った支援を受けることに対する抵抗感が,教員にもLDの子どもにもあることが多い。LDの子どもが適切な支援を受けるためには,多様性が認められている学級が必要である。よく使われる例えであるが,目が悪い子どもがメガネをかけるのと同じように,読み書き算数の基礎的部分でつまずいている子どもが,代読,キーボード,電卓等を使うことができれば,LDの子どもの学習は遅れることはないであろう。多様性が認められた学級の中でこそ,LDの子どものみならず,すべての子どもの学習が支えられるのではないだろうか。
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