イ 本時2:対話活動を通じた考えの深化
実践2における対話活動は、【表14 評価基準表】に基づいて児童の思考を捉えながら、以下のような展開で行う。
表19 本時2:対話活動を通して自分の考えを発展させる時間の展開
段階 | 学習活動 | 指導上の留意点 | 予想される児童の反応 | 配時 |
---|---|---|---|---|
導入 | 1 前時の学習を振り返り、本時のめあてを確認する。 | ◯ 対話の視点を明確にするために、「なぜその改革が重要だと考えたのか」「他の改革とどのようなつながりがあるのか」という2つの観点を示す。 | ・「前回は殖産興業が大切だと書きました」 ・「地租改正は農民の生活を変えたから大切だと思います」 ・「学校をつくったことで、国民の教育が進んだと考えました」 | 5 |
展開 | 2 グループ対話を行う。 3 全体交流を行う。 | ◯ 時代背景との関連づけを促すために、質問カード【表9】を活用させる。 ◯ 社会的事象の関連を捉えることができるようにするために、児童の考えを構造的に板書する。 ◯ 対話が深まるよう、以下の3点に留意して支援する。 ・各改革の具体的な内容の確認 ・時代背景との結びつけ ・他の改革との関連づけ | 【グループ対話】 ・「殖産興業は外国との貿易のために必要だったんだと思います」 ・「地租改正で政府は安定した税収を得られて、農民は自由に作物を選べるようになりました」 ・「質問カードを見ると、確かにその時代の課題と関係していますね」 【全体交流】 ・「他のグループの意見を聞いて、改革同士がつながっていることがわかりました」 ・「廃藩置県があったから、他の改革も全国で進められたんですね」 ・「それぞれの改革には良い面と課題があったことがわかりました」 | 25 |
終末 | 4 本時の学習を振り返り、自分の考えを再構成する。 5 研究に関する調査フォームに回答する。 | ◯ 対話を通して深まった考えを整理できるようにするために、「グループ対話や全体交流を通して新たに気づいたこと」「自分の考えの変容」という2つの観点を示す。 ◯ 本研究の有効性を検証するために、調査フォームを用いて「AI フィードバックと対話活動が考えを深めることに役立ったか」という観点での振り返りを行う。 | ・「最初は一つの改革しか見ていなかったけど、他の改革とのつながりもわかってきました」 ・「不平等条約を改正するために、いくつもの改革が必要だったことがわかりました」 | 10 |
注意した点:
- 研究構想で示した3段階の対話(グループ対話→全体交流→再構成)を明確に位置付けた
- 質問カードの活用方法を具体的に示した
- 評価基準表との関連を意識した支援の在り方を示した
- 研究の有効性を検証するための振り返りを位置付けた
チェックリストから見た確認事項:
- 理論と実践の接続:対話活動の理論的説明が実践可能な形で具体化されている
- 全体構成のバランス:本時1と本時2の関連が明確である
- 実現可能性:40分の授業時間の中で実施できる展開になっている
対話のシミュレーション
【グループ対話の場面】(4人グループ)
A:私は地租改正が最も重要だと考えました。教科書p.178を見ると、農民が土地の持ち主として認められるようになったからです。
B:でも、視点シートの「課題解決への効果」で考えると、別の面も見えてきませんか?教科書には、毎年決まった額の税を納めなければならなくなったとも書いてありますよ。
C:そうですね。豊作でも不作でも同じ税金を納めないといけないのは、農民にとって大変だったかもしれません。でも、なぜこの改革が必要だったのでしょうか?
D:あ、それについて私考えがあります!p.178-179を見ると、政府は殖産興業を進めていて、工場をつくったり鉄道を敷いたりしていますよね。そのためにはお金が必要で、税金を安定して集められる仕組みが必要だったんじゃないでしょうか。
A:なるほど!政府と農民、それぞれの立場で見ると、良い面と課題が両方あったんですね。
【全体交流の場面】
教師:それでは、各グループで話し合った内容を発表してもらいましょう。1班さん、どんな意見が出ましたか?
1班代表:私たちは地租改正について話し合いました。初めは農民が土地の持ち主になれたから良い改革だと思っていたのですが、話し合ううちに、農民には大変な面もあったことがわかりました。
教師:具体的にどんな点が大変だったのでしょう?また、なぜそれでも地租改正を行う必要があったのでしょうか?
2班代表:私たちのグループでは、政府の立場から考えてみました。p.178を見ると、殖産興業を進めるために多くの費用が必要で、そのために安定した税収が必要だったと考えました。
児童A:関連して意見を言ってもいいですか?私は学制との関係も重要だと思います。p.176を見ると、政府はたくさんの小学校を作ろうとしていますよね。それにもお金が必要だったはずです。
教師:なるほど。政策同士のつながりが見えてきましたね。他の班はどうですか?
3班代表:私たちは廃藩置県と関連付けて考えました。p.177によると、政府は全国に役人を送って直接支配するようになりました。だから税金も全国で同じように集められるようになったと思います。
教師:とても面白い視点ですね。ここで少し整理してみましょう。地租改正は他の政策とどのようにつながっていて、それは明治政府のどんな目標に結びついていたのでしょうか?
児童B:私は、不平等条約の改正につながっていると思います!政府は、近代的な国をつくるためにいろいろな改革を進める必要があって、そのためにはお金が必要でした。だから、安定した税収を得られる地租改正が重要だったんだと思います。
児童C:付け加えていいですか?地租改正で決まった税金を納められない農民は土地を手放すことになって、その土地を買った地主が小作人として農民を働かせるようになったと教科書に書いてあります。この変化は、今の時代まで影響があったんじゃないでしょうか。
教師:素晴らしい視点ですね。「実施時期と効果」という視点で見ると、地租改正の影響は長く続いたということですね。ここで考えてみましょう。ある政策が「重要」だということは、どういう基準で判断できるでしょうか?
児童D:私は三つの基準があると思います。一つ目は他の政策にどれだけ影響を与えたか。二つ目は人々の暮らしをどれだけ変えたか。三つ目は政府の目標達成にどれだけ貢献したか。です。
児童E:私も同じように考えていて、さらに付け加えると、その影響が一時的なものなのか、それとも長く続くものなのかも重要だと思います。
教師:とても深い考察ができていますね。では、これらの視点を使って、他の改革についても見ていきましょう。次は学制について考えてみたいと思います…
【全体交流の続き】
教師:では次に、学制について考えていきましょう。4班から発表してもらえますか?
4班代表:私たちは学制が重要だと考えました。p.180-181を見ると、明治政府は「学問は身を立てる財本」という考えで、すべての子どもに教育を受けさせようとしました。
児童A:でも、みんなが喜んで学校に通ったわけではないですよね。教科書に「女子は男子に比べて学校に通う人が少なかった」と書いてあります。
児童B:それは、農家の人たちが子どもを働き手として必要としていたからだと思います。学校に行くことは、その分働けなくなるということですからね。
教師:なるほど。でもなぜ政府はそれでも学校教育を進めようとしたのでしょうか?
児童C:私は殖産興業と関係があると思います!p.178-179を見ると、政府は新しい工場をたくさん作っていますよね。そこで働く人には読み書きや計算ができる必要があったんだと思います。
児童D:徴兵令とも関係があるんじゃないですか?p.176-177には、身分に関係なく兵士になれるようになったと書いてあります。兵士になるためにも教育は必要だったと思います。
教師:政策同士のつながりが見えてきましたね。では、「実施時期と効果」という視点で見ると、学制はどんな影響を与えたでしょうか?
児童E:私は現代まで続く大きな影響があったと思います。今、私たちが学校で学べるのも、この時の改革があったからです。
児童F:さらに付け加えると、当時は珍しかった女子教育も少しずつ広がっていって、今では男女関係なく教育を受けられるようになりました。
教師:視点シートの「課題解決への効果」で考えると、学制はどんな課題を解決しようとしていたのでしょう?
児童G:欧米の国々に追いつくために、国民全体の力を高める必要があったんだと思います。そのためには、みんなが読み書きや計算をできるようになることが大切でした。
児童H:でも、お金持ちの家の子どもは学校に通えても、農家の子どもは働かないといけないことが多かったんですよね。そういう面では、まだ課題が残っていたということですよね。
教師:そうですね。政策には良い面と課題の両方があったことがわかります。ここまでの議論を整理すると、学制は他の政策とどんなつながりがあったでしょうか?
児童I:私なりにまとめると、殖産興業のための人材育成、徴兵令で必要となる教育、さらに不平等条約を改正するための近代化など、いろいろな目的につながっていたと思います。地租改正で得た税金が、学校を建てる費用になったというつながりもありました。
教師:素晴らしいまとめですね。では次は…
【全体交流の続き】
教師:では次に、徴兵令について考えていきましょう。5班はどんな議論がありましたか?
5班代表:私たちは最初、徴兵令は単に軍隊を作るための改革だと思っていました。でも話し合ううちに、p.176を見返してみると、身分制度の改革とも関係していることに気づきました。
児童A:どういうことですか?
5班代表:江戸時代は武士だけが戦う人でしたが、徴兵令によって、平民の男子も兵士になれるようになったんです。これは大きな変化だったと思います。
児童B:それって四民平等にもつながりますよね。でも、p.177を見ると、徴兵令に対して不満を持つ人も多かったと書いてあります。なぜでしょうか?
教師:良い質問ですね。当時の人々の立場に立って考えてみましょう。
児童C:私の考えでは、20歳の男子は大事な働き手だったと思います。その人が兵士として何年も家を離れることは、家族にとってとても大変だったんじゃないでしょうか。
児童D:そうですね。特に農家では、収穫の時期に人手が必要なのに、若い人が兵士として出て行ってしまうのは困りましたよね。
教師:視点シートの「実施時期と効果」で見ると、徴兵令はどんな影響を与えましたか?
児童E:軍隊をつくることで、外国からの侵略を防ぐ強い国になろうとしたんだと思います。富国強兵という目標につながっていますよね。
教師:では次に、殖産興業について考えてみましょう。6班お願いします。
6班代表:私たちは殖産興業が最も重要だと考えました。p.178-179を見ると、政府は外国から機械を買い入れて工場を作ったり、鉄道を敷いたりしています。
児童F:でも、最初は赤字が続いたって書いてありますよね。それなのになぜ続けたんでしょう?
児童G:私は不平等条約と関係があると思います!外国に負けない工業国になることで、対等な関係を築こうとしたんじゃないでしょうか。
教師:なるほど。では、これまでの改革との関連で考えてみましょう。殖産興業は他の改革とどうつながっていますか?
児童H:まず、工場で働く人を育てるために学制が必要でした。それに、地租改正で集めた税金が工場を作るためのお金になったと思います。
児童I:私は、鉄道ができたことで、廃藩置県で目指した中央集権の体制がより強くなったと思います。物資や人の移動が便利になりましたからね。
教師:では「社会への影響」という視点で見ると、殖産興業は人々の暮らしをどう変えましたか?
児童J:工場で働く人が増えて、農業だけでなく、工業で働く人も増えていったと思います。女性も工場で働くようになって、生活が変わりましたよね。
児童K:私は富岡製糸場の写真を見て思ったんですが、外国の技術を取り入れることで、日本の伝統的な仕事のやり方も変わっていったんじゃないでしょうか。
教師:みなさんの意見を聞いていると、どの改革も単独ではなく、お互いに関連し合っていることが見えてきましたね。ここで、今までの議論を踏まえて、明治政府の改革全体について考えてみましょう。何を目指してこれらの改革が行われたのでしょうか?
【全体交流:まとめの場面】
教師:これまでの議論を踏まえて、明治政府の改革全体について考えてみましょう。何を目指してこれらの改革が行われたのでしょうか?
児童A:私は、p.173の五箇条の御誓文が関係していると思います。「広く会議を興し」とあるように、新しい政治の仕組みをつくろうとしました。だから廃藩置県なども行ったんだと思います。
児童B:私からは視点シートの「目標達成への貢献」で考えてみたいと思います。当時の日本には不平等条約という大きな課題がありました。これを改正するために、欧米の国々と同じような近代国家になることを目指したんだと思います。
教師:具体的にどんな改革が、その目標につながっていったのでしょうか?
児童C:例えば、殖産興業で工業国になろうとしたり、学制で教育を広めようとしたり…。全部の改革が、「欧米の国々に追いつきたい」という思いにつながっていたんじゃないでしょうか。
児童D:付け加えていいですか?私は、その過程で江戸時代の仕組みが大きく変わったことも重要だと思います。p.177を見ると、身分制度がなくなって、誰でも好きな仕事を選べるようになりましたよね。
教師:なるほど。では、「社会への影響」という視点で見ると、これらの改革は人々の暮らしをどのように変えたのでしょうか?
児童E:良い面と課題の両方があったと思います。例えば地租改正では、農民は土地の持ち主になれた反面、決まった税金を納めなければならなくなって大変でした。
児童F:学制でも同じですよね。教育を受けられるようになったけれど、貧しい家庭の子どもは働かないといけなくて、なかなか学校に通えませんでした。
教師:では「実施時期と効果」という視点ではどうでしょう?
児童G:p.178-179を見ると、最初は大変なことも多かったけれど、だんだん日本は近代的な国になっていったことがわかります。例えば、鉄道が敷かれたり、工場ができたり…。
児童H:そうですね。それに、これらの改革は今の私たちの生活にもつながっていると思います。例えば、男女関係なく教育を受けられることや、好きな仕事を選べることなど。
教師:みなさんの意見をまとめると、明治の改革にはどんな特徴があったと言えそうですか?
児童I:私は3つあると思います。1つ目は、欧米の国々に追いつこうとしたこと。2つ目は、江戸時代の古い仕組みを大きく変えたこと。3つ目は、改革には良い面と課題の両方があったということです。
児童J:それに、1つの改革だけではなく、いろいろな改革が関連し合って進められたことも特徴だと思います。例えば、殖産興業を進めるためには、地租改正で資金を集めることも、学制で人材を育てることも必要でした。
教師:素晴らしい意見ですね。では最後に、これらの改革の中で最も重要なものは何だったと考えますか?その理由も含めて、ノートにまとめてみましょう。
【十分達成(A)の記述例】
例1
私は殖産興業が最も重要だと考えます。なぜなら、不平等条約を改正するためには、欧米の国々と対等な立場になる必要があり、そのためには工業国として発展することが不可欠だったからです。殖産興業を進めるために、政府は地租改正で得た資金を使って、富岡製糸場のような官営工場を作ったり、鉄道を敷いたりしました。また、工場で働く人材を育てるために学制も必要でした。このように、殖産興業は他の改革とも深く関連しながら、日本の近代化を支えた重要な政策だったと考えます。
例2
私は廃藩置県が最も重要だと思います。その理由は、この改革があったからこそ、他の改革も全国で同じように進めることができたからです。教科書p.177によると、政府は全国の藩を廃止して県を置き、中央から役人を送って直接支配するようになりました。これにより、学制による教育や、地租改正による新しい税制度なども、全国で統一的に実施することができました。また、身分制度も改められ、江戸時代の古い仕組みから新しい社会への大きな一歩となりました。
例3
私は学制が最も重要だと考えます。なぜなら、近代国家をつくるためには、国民全体の力を高める必要があったからです。教科書p.180-181を見ると、「学問は身を立てる財本」という考えのもと、すべての子どもに教育を受けさせようとしました。確かに、農家の子どもは働かなければならず、なかなか学校に通えないという課題もありました。しかし、この改革は殖産興業で必要な人材を育てただけでなく、現代の私たちにも受け継がれる大切な改革だったと思います。
【おおむね達成(B)の記述例】
例1
私は殖産興業が大切だと思います。政府は外国から機械を買い入れて工場を作り、鉄道も敷きました。富岡製糸場のような工場を作って、産業を発展させようとしました。最初は赤字が続いたけれど、だんだん日本は工業国として発展していきました。これによって、外国との関係も良くなっていったと思います。
例2
廃藩置県は政府が全国を直接支配するために行った改革です。藩をなくして、代わりに県を置きました。そして、政府の役人を送って、全国で同じような政治ができるようになりました。これは他の改革を進めるためにも必要な改革だったと思います。だから、私はこの改革が重要だと考えました。
例3
学制によって、すべての子どもが教育を受けられるようになりました。男子も女子も、みんなが学校で学べるようにしようとしました。でも、家が貧しい子どもは働かないといけなくて、学校に通えない人も多かったようです。それでも、この改革は今の私たちの教育にもつながっているので、重要だと思います。
【努力を要する(C)の記述例】
例1
殖産興業で工場をたくさん作りました。外国の機械も買いました。鉄道も作りました。だから重要な改革だと思います。
例2
廃藩置県で、たくさんあった藩がなくなりました。そのかわりに県ができました。政府が強くなったので、重要な改革でした。
例3
学制で、みんなが学校に行けるようになりました。女の子も学校に行けるようになりました。だから、この改革が一番重要だと思います。
社会科における対話的な学びを深める〜明治の改革を多面的に考える授業実践から〜
はじめに
小学6年生の社会科「明治の新しい国づくり」の単元で、「明治政府が行った改革の中で最も重要なものは何か」という問いについて考える授業実践について、対話活動を中心に紹介します。
実践のポイント
1. 対話を深めるための事前準備
(1) 視点シートの活用
児童が多面的に考察できるよう、以下の5つの視点を提示しました:
- 目標達成への貢献(不平等条約改正・欧米諸国への追いつき)
- 社会への影響(人々の暮らしの変化・社会の仕組みの変化)
- 課題解決への効果(当時の問題解決・新たな課題の発生)
- 影響を受けた範囲(対象となった人々・全国への広がり)
- 実施時期と効果(即時的な効果・長期的な影響)
(2) 教科書の活用
- ページ番号を明示して根拠を示すよう指導
- 具体的な記述を引用しながら自分の考えを説明
2. グループ対話の工夫
(1) 対話の質を高める発問例
- 「なぜその時期に必要だったのでしょうか?」
- 「農民と政府、それぞれの立場からその政策をどう見ていたでしょうか?」
- 「改革の良い面と課題の両方を考えてみましょう」
(2) つまずきやすいポイントへの支援
- 地租改正を「農民が土地の持ち主になれた良い改革」と単純に捉えがち
→ 税制度の変更による農民への影響も考えさせる - 学制を「すべての子どもが教育を受けられるようになった」と理想的に捉えがち
→ 実際の就学状況や家庭の事情にも目を向けさせる
3. 全体交流の進め方
(1) 教師の役割
- 個々の政策の理解から政策間の関連性の把握へと思考を発展
- 「重要」の判断基準を児童から引き出す
- 多様な立場からの考察を促す発問
(2) 板書の工夫
- 6つの改革をキーワードとして配置
- 政策間の関連を矢印でつなぐ
- 異なる立場からの評価を色分けして記録
予想される児童の反応と支援
1. グループ対話での反応例
児童A:「地租改正で農民が土地の持ち主になれたから良かったと思います」
児童B:「でも、教科書には税金のことも書いてありますよ」
児童C:「確かに。豊作でも不作でも同じ額を納めないといけなかったんですね」
このような対話から、一面的な見方から多面的な考察へと深めていきます。
2. 全体交流での期待される発言
「殖産興業を進めるために、地租改正で集めたお金が必要だったんだと思います」
「学制は工場で働く人や兵士を育てることにもつながっていたんですね」
「廃藩置県があったからこそ、他の改革も全国で同じように進められたと思います」
評価のポイント
1. 十分達成(A)の特徴
- 複数の政策を関連付けて説明
- 時代背景や目的を明確に示す
- 教科書の具体的な記述を根拠として使用
- 良い面と課題の両面を考察
- 現代とのつながりまで言及
2. おおむね達成(B)の特徴
- 基本的な事実は理解している
- 政策の目的を説明できている
- 単純な因果関係は理解している
- 一面的ではあるが理由を示せている
実践を通して見えてきたこと
1. 対話を深める3つのポイント
(1) 根拠の明確化
教科書の具体的な記述を参照することで、対話に説得力が生まれます。
(2) 多様な視点の提供
視点シートを活用することで、多面的な考察が可能になります。
(3) 関連付けの重視
政策間のつながりを意識させることで、より深い理解につながります。
2. 陥りやすい課題と対策
(1) 一面的な理解にとどまる
→ 異なる立場からの考察を促す発問を用意
(2) 政策を個別に捉えがち
→ 政策間の関連を視覚的に示す板書の工夫
(3) 現代とのつながりが見えにくい
→ 実施時期と効果の視点から長期的な影響を考えさせる
おわりに
この実践を通して、児童が明治の改革を多面的に捉え、現代とのつながりまで考察できるようになることを目指しています。対話活動を充実させるためには、教師の意図的な支援と、児童が主体的に考えを深められる場の設定が重要です。
視点シートの活用や教科書の具体的な記述の参照など、いくつかの手立てを組み合わせることで、より質の高い対話が実現できると考えています。今後も実践を重ねながら、よりよい授業づくりを目指していきたいと思います。
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