【授業改善】論文から考える学習意欲を高める教材選びのコツ

目次

はじめに

学習意欲の低い児童にはどのような教材を与えるべきでしょうか。実は、意欲の高低によって、求められる教材の特性が異なることが明らかになっています。

京都大学大学院の研究チームが大学生・社会人400名を対象に行った調査によると、学習意欲が低い場合、内容的にシンプルな教材を好む傾向があるそうです。特に、発展的な内容へのニーズが下がることが分かりました。

一方、学習意欲の高い人の場合は、内容の充実した教材を求める傾向が見られました。さらに、自律的に学習に取り組む姿勢が強いほど、この傾向が顕著だったとのことです。

元の論文にあたりたい先生は、以下のリンクから赤文字のダウンロードをクリックしてください。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjet/42/Suppl./42_S42034/_article/-char/ja

意欲レベルに合わせた教材選択の重要性

つまり、学習者の意欲レベルに合わせて、教材の内容を調整することが大切だと言えます。

意欲の低い児童には、まずはコンパクトでわかりやすい教材を提供し、学習の敷居を下げることが有効でしょう。

例えば、算数科の場合、意欲の低い児童には、基本的な計算問題に絞ったプリントを与えることから始めます。

私自身、ベテランの先生に教えてもらった手法です。

専科として働いた年に実践して効果が得られました!

たったの5問だけ掲載したプリントを複数枚準備することによって、子どもたちがかなり意欲的に解き進めることができました。

問題数も少なめにし、解き方の手順も明確に示すことで、取り組みやすさを感じてもらうのです。

徐々に問題の難易度を上げていくことで、学習への自信をつけさせていくことができるでしょう。

社会科においても、意欲の低い児童には、まずは身近な話題から入ることが大切です。

例えば、自分の住んでいる地域の特色を簡単な言葉で説明する課題から始めるのも一つの方法です。

写真や絵を多用したり、クイズ形式で学習を進めたりするなど、楽しみながら学べる工夫も効果的でしょう。

逆に、意欲の高い児童には、発展的な内容にもチャレンジできる教材を与えることで、さらなる学びを促すことができるはずです。

算数科なら、応用問題にじっくり取り組ませたり、自分なりの解き方を考えさせたりすることで、思考力を鍛えることができます。

高学年になれば、数学オリンピックの過去問題に挑戦させるのも面白いかもしれません。

社会科では、意欲の高い児童には、歴史上の出来事の背景を掘り下げて調べる課題を出してみましょう。

例えば、戦国時代の合戦について学ぶ際に、単に合戦の経緯を追うだけでなく、漫画で書かれた伝記などを学級文庫として置いておき、着目させることで、より深い理解につなげることができるはずです。

児童一人ひとりの特性を見極める

もちろん、これは一つの指針であり、実際の教材選択では、児童一人ひとりの特性をしっかりと見極めることが何より大切です。

例えば、算数が苦手な児童の中には、数字への苦手意識から学習意欲が低下している場合があります。そのような児童には、数字を使わずに図形や絵を使った教材を提供することで、算数への興味を引き出すことができるかもしれません。

また、社会科が得意な児童の中には、歴史上の人物に強い関心を持っている場合もあります。そのような児童には、人物伝的な教材を与えることで、学習意欲をさらに高めることができるでしょう。

ICTを活用した個別最適化された教材提供も、児童一人ひとりの特性に合わせた学習を実現する上で、大いに役立つはずです。

現場での実践にあたっての課題

この研究結果を参考に、教師の皆さんには、児童の学習意欲を高める効果的な教材選びに取り組んでいただきたいと思います。ただし、現場での実践にあたっては、いくつかの課題もあることを認識しておく必要があります。

  1. 児童の学習意欲に合わせて教材を選ぶという考え方自体は理にかなっており、現場でも実践できる。ただし、一つのクラスの中にも様々な意欲レベルの児童がいるため、全員に最適な教材を用意するのは難しい。
  2. ICTを活用した個別最適化は理想だが、現状では設備面での制約が大きい。また、デジタル教材の準備にも時間がかかるため、現実的には紙ベースの教材との併用になるだろう。
  3. 算数科や社会科の具体例は参考になるが、他教科についても同様の工夫が必要だ。また、学年によっても児童の特性が異なるため、発達段階に応じた教材選択が求められる。

現実的な教材選びのヒント

これらを踏まえると、学習意欲を高める教材選びを現場で実践するには、いくつかの工夫が必要だと言えます。

まず、一つのクラスの中では、意欲レベルの異なる児童に合わせて、複数の教材を用意することが望ましいでしょう。ただし、準備の手間を考えると、全ての児童に個別の教材を用意するのは現実的ではありません。

そこで、基本的な内容の教材と、発展的な内容の教材を組み合わせて用意し、児童の理解度に応じて選択させるという方法が考えられます。

例えば、算数科では、基本問題と応用問題を組み合わせたプリントを用意し、児童自身に選ばせるのです。

また、ICTを活用した個別最適化された教材提供は、学習効果を高める上で有効ですが、設備面での制約や準備の手間など、現場での実践にはハードルがあるのも事実です。

そこで、紙ベースの教材とデジタル教材を組み合わせたハイブリッドな活用方法も一つの選択肢になります。

例えば、基本的な内容は紙のプリントで学習させ、発展的な内容はタブレット端末で学習させるといった方法です。

タブレット端末で学習させるためには、教師が学習用のサイトを準備していてもいいかもしれません。私のホームページでも発展的な内容が掲載されたページを作っていきたいと思います。

さらに、他教科での実践や、学年に応じた教材選択も重要です。

また、低学年と高学年では、児童の発達段階が大きく異なるため、同じ教材でも受け取り方が変わってきます。学年に応じた教材選びが求められる理由です。

おわりに

児童の学習意欲を高める教材選びは、教師にとって重要な課題の一つです。意欲レベルに合わせた教材の使い分けは、その有効な方法の一つですが、現場での実践には様々な制約があることも事実です。

しかし、工夫次第では、意欲を高める教材選びは可能なはずです。紙とデジタルを組み合わせたハイブリッドな教材活用や、他教科・他学年での実践など、様々な可能性を探ってみてください。

児童一人ひとりの特性を見極め、その可能性を最大限に引き出すことができる教材選び。それは、教師の皆さんに求められる重要なスキルだと言えるでしょう。

この記事が、教材選びに悩む教師の皆さんにとって、一つのヒントになれば幸いです。

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この記事を書いた人

福岡の小学校教員 8年目 / 社会科の授業にICTを活用 / GEG Chikuhoリーダー /初心者向けICT研修講師/ 福岡社会科教育実践学会・日本教育工学会所属 / WordPressでICT活用術を発信 / 動画編集・デザイン・Web記事作成・論文執筆・楽曲制作も

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