【自分用】論文メモ「社会科の3つの場面における書く活動について」

今回の記事は、自分用のメモです。

1.問題と目的

教育の情報化に伴うICT の普及と中学生の学習態様に関する調査報告

野中, 陽一朗, 2017, 情報機器を活用した教育の方法及び技術に関する基礎的研究 ―児童生徒のICT 活用に対する態度や意識に着目して―: 高知大学, 55–64 p.

近年、GIGAスクール構想により、小・中学校での1人1台端末の整備が進み、ICTを活用した教育活動が日常化しつつある。その背景には、ICTを用いることで個別最適な学びや協働的な学びが実現できるという期待がある(文部科学省 2020)。特に、主体的・対話的で深い学びの実現に向けて、ICTの効果的な活用方法が模索されている。

こうした流れの中で、ICTを実際に使う児童生徒の意識に目を向ける必要性が高まっている。福本ほか(2015)や野中(2017)は、中学生のICT活用に対する認識や態度について調査を行い、その実態や類型を明らかにしている。また、中邑(2015)は、ICTを使わなくなる子どもの存在を指摘し、児童生徒のICTに対する意識の多様性を示唆している。

しかしながら、先行研究の多くは中学生を対象としており、小学生、特に学習者としての児童の視点からICT活用の在り方を探った研究は管見の限り見当たらない。児童は教師の指導のもと、黒板やノートといったアナログの学習ツールとタブレット端末を併用しながら学んでいる。その中で、児童一人一人が、紙とタブレットのどちらを使うことが自分の学習に適しているのかを考え、判断している可能性がある。学習者としての児童が、授業の中でICTをどのように捉え、どう活用したいと考えているのか、そのニーズを丁寧に汲み取ることが、今後の効果的なICT活用の鍵になるのではないだろうか。

そこで本研究では、小学校第5学年社会科の授業に焦点を当て、紙とタブレットの併用場面における児童の意識を探ることを目的とする。学習者の視点から、どのような場面でアナログとデジタルのツールを使い分けたいと考えているのか、ICT活用への期待や不安はどのようなものかを明らかにする。そして、児童の実態に即したICT活用の在り方と、それを支える教師の役割について考察を行う。本研究の知見は、GIGAスクール時代の新しい学びの形を模索する上で重要な示唆を与えるものになるだろう。

2.実践の概要

2.1. 社会科におけるタブレット端末活用の意図

本研究は、X市立Y小学校の第5学年を対象とした。

【学習指導要領】

問題解決的な学習とは,単元などにおける学習問題を設定し,その問題の解決に向けて諸資料や調査活動などで調べ,社会的事象の特色や相互の関連,意味を考えたり,社会への関わり方を選択・判断したりして表現し,社会生活について理解したり,社会への関心を高めたりする学習などを指している。

・学習指導要領に示された社会科の学習過程は、大きく以下の3つの場面に分けられる。

  1. 問いづくりの場面:学習課題を設定し、児童の興味・関心を喚起する。
  2. 調べる場面:様々な資料を活用して、課題について調査・研究を行う。
  3. まとめる場面:調べた内容を整理し、自分の考えをまとめ、表現する。

【そこでICTはいかに活用しうるか】

小倉 勝登, 学習指導要領に基づく小学校社会科の授業づくり, 教育セミナー研究紀要, 2022, 25 巻, 1 号, p. 10-13, 公開日 2023/06/19, Online ISSN 2758-8467, https://doi.org/10.60234/kenkyukiyou.25.1_10, https://www.jstage.jst.go.jp/article/kenkyukiyou/25/1/25_10/_article/-char/ja

この論文では、小学校社会科においてタブレット端末などのICT機器を活用することのメリットとして以下の点が挙げられています。

  1. クラウドを使った資料提示により、写真や動画などのマルチメディア教材を活用して子どもの興味・関心を引き出し、理解を深めることができる。
  2. 社会科見学・調査活動では、写真や動画の撮影、インタビューの録画などにより、簡単かつ効率的に情報収集・保存ができ、調べた内容の可視化が可能になる。
  3. アプリの付箋機能やテキストボックス機能を使うことで、子ども一人一人の考えを一瞬で可視化でき、全員の考えを短時間で共有できる。
  4. 思考ツールを使って子どもたちの考えを「比較」「分類」「俯瞰」「構造化」することにより、自分の考えをまとめたり深めたりできる。
  5. コメント機能やチャット機能により、子ども同士や子どもと教師が瞬時に対話を行え、学び合いや深い学びにつながる。
  6. 学習のまとめをデジタル化することで、効率化と可視化が図られ、子ども同士の意見交換による学び合いの活性化につながる。
  7. 学習履歴をクラウド上に保存・蓄積することで、ポートフォリオ評価が容易になる。
  8. 端末の家庭への持ち帰りにより、家庭学習と学校学習の往還を図りながら、子ども主体の学習が展開できる。

今野, 孝一, 菅原, 弘一, 2023, 小学校社会科におけるICT を活用した問題解決的な学習: 宮城学院女子大学附属発達科学研究所, 81–91 p.

・問いづくりの場面では、デジタル教材を提示することで、児童の興味・関心を高め、学習課題の設定を促すことができる。また、タブレット端末を用いて、思いついたことをすぐに書き留めたり、情報を検索したりすることで、問いを深めることができる。
・調べる場面では、インターネットを活用し、効率的に情報収集を行うことができる。また、タブレット端末を用いてメモを取ることで、どこにメモしたかがわかりやすく、後で見返しやすくなる。
・まとめる場面では、文書作成ソフト等を用いて、学習内容を整理し、わかりやすく表現することができる。また、タブレット端末を用いて共有することで、他者の意見を知り、気づきを得ることができる。

2.2. タブレット端末活用の具体例

本節では、上述の「問いづくり」「調べ学習」「まとめ」の各場面における、タブレット端末を用いた「書く活動」の概要について説明する。

「問いづくり」では、タブレット端末を用いることで、思いついたことをすぐに打ち込んで書き留めることができる。また、問いがわからない時に、インターネットで検索して、どんな問いがあるのかを調べることができる。一方で、紙の良さとして、付箋に書いて似ているものを見つけ、項目ごとに分けるといった操作性の高さが挙げられている。

「調べ学習」では、タブレット端末を用いることで、読み方のわからない漢字をすぐに調べたり、リンクを貼ってコメントを書き込んだりすることができる。また、ジャムボードを使って付箋でまとめることで、表現力を高めることができる。一方で、紙の良さとして、絵や図を自由に書けること、どこにメモしたかがわかりやすいことが挙げられている。

「まとめ」では、タブレット端末を用いることで、タイピングが早くなり、スライドやドキュメントを使ってまとめることができる。また、みんなで共有することで、他者の意見を知り、気づきを得ることができる。一方で、紙の良さとして、自分が書いた文章に絵を付け足すことができるなど、自由度の高さが挙げられている。また、紙に書くことで、理解度が高まるという意見もある。

以上のように、タブレット端末と紙のそれぞれの良さを活かしながら、児童が主体的に「書く活動」に取り組むことが、社会科の学習においては重要であると考えられる。

先行研究

登本 洋子, 高橋 純, 初等中等教育における学習者用情報端末の整備と活用に関する意識調査の3か年の比較, 日本教育工学会研究報告集, 2023, 2023 巻, 2 号, p. 64-67, 公開日 2023/07/21, Online ISSN 2436-3286, https://doi.org/10.15077/jsetstudy.2023.2_64, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsetstudy/2023/2/2023_JSET2023-2-A10/_article/-char/ja, 抄録:

GIGAスクール構想により,初等中等教育の児童生徒に1人1台の学習者用コンピュータ端末と通信ネットワークが整備された.本研究では,ICT環境の整備と活用に対する期待や懸念の変化を明らかにするために,1人1台端末を学習で使用することに関する教員,保護者,教員養成系大学に在籍する学生の意識を3か年にわたって調査した.結果,授業における学習用端末の活用は進んでいるが,意識の面では大きな変化がないことが確認された.また,1人1台端末への期待は保護者が最も高く,教員が最も低いことが確認された.

北濱 康裕, 小林 祐紀, 白𡈽 瑞樹, 西岡 遼, 岩崎 啓子, 中川 一史, スライド作成アプリを従来のノート代わりに初めて 授業で活用した際の学習者の活用に対する意識調査, AI時代の教育論文誌, 2023, 6 巻, p. 1-7, 公開日 2023/10/20, Online ISSN 2436-4509, https://doi.org/10.50948/esae.6.0_1, https://www.jstage.jst.go.jp/article/esae/6/0/6_1/_article/-char/ja

この論文すごく良かったので、記事にしました。

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この記事を書いた人

福岡の小学校教員 8年目 / 社会科の授業にICTを活用 / GEG Chikuhoリーダー /初心者向けICT研修講師/ 福岡社会科教育実践学会・日本教育工学会所属 / WordPressでICT活用術を発信 / 動画編集・デザイン・Web記事作成・論文執筆・楽曲制作も

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